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- 御刀の豆知識
取り扱い上の注意
日本刀はわれわれ日本民族にとって大きな宝です。
不用意に取り扱いますと、名刀を傷つけたり自分や他人を傷つけたりすることがあります。
日本の宝を次代に伝えるため、取り扱いには十分注意してください。
- 御刀を持つときは、必ず柄の方を上にして切先が下がるように持ちましょう。
- 刀剣類の登録証は、御刀と一緒に保管しましょう。
-
コピー等で登録番号などの控をとっておくようにしましょう。
万が一紛失したときに役に立ちます。
お手入や鑑定時の刀剣の抜き方・納め方
御刀の抜き方
-
御刀を抜くときは刃を上にして左手で下(棟の方)から鞘を持ちます。
このとき切先は前方、柄は手前となります。 - 右手で柄を上から握ります。
- 軽く鯉口をきり、注意深くまっすぐに抜きます。
※決して左右に抜いたり、抜きながら角度を変えて刃や地鉄を見たりしないで下さい。
ヒケ傷の原因となる恐れがあります。
また何より、御刀や持ち主に対して大変失礼なことです。
御刀の納め方
- 御刀を納めるときは、抜くときと同じように左手で鞘を下から持ち、右手で柄を上から握ります。
- 刃を上にして鯉口に切先をのせ、まっすぐゆっくり、注意深く納めてください。
- 鯉口のところで、はばきがしっかり納まっているかどうかを確認します。
※強く入れたり、音がするくらい無理な力をかけることは、鞘をいためる原因となります。
刀の姿と時代
平安時代末期 〜鎌倉初期 |
長さ2尺7〜8寸前後の太刀で鳥居反り深く腰反り気味で、踏ん張りが あり上部にいくほど細くなり小切先となります。 |
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鎌倉中期〜 |
身幅が広くなり、先幅が@程細くならず重ねは厚くなります。 切先は猪首となり少し力強くなります。 |
鎌倉末期 | Aの形状より切先が延び、次第に長大化して南北朝期へと入ります。 |
南北朝期 |
最も長大で身幅広く切先が延び覇気にあふれる豪壮な刀があらわれます。 身幅の割に重ねは薄く、反りが比較的少ないです。 |
室町初期 |
鎌倉時代初期の太刀姿を見本とし、身幅狭く、切先小さく、一見してもっと古く見えますが、大きな相違点は先反りとなるところです。 長さは2尺3寸〜4寸位のものが多いです。 |
室町中期 |
室町初期頃より、徐々に太刀から刀へと変わっていきます。 その刀の姿が完成したのがこの時代です。 |
室町後期 |
2尺4寸位の長寸の刀と2尺前後〜 長くても2尺3寸までの片手打と言われる刀があります。 これは先反り強く、中心が短いです。 |
桃山期 |
南北朝のものを理想として、それに打刀の様式が加わり2尺4〜5寸前後で、反りが少なく切先の延びた姿です。 一般に、慶長新刀と呼ばれています。 |
江戸初期 |
反りの少ないのはGと同じですが、先幅を落とし切先が詰まります。 斬ると言うより突きに適しているのかもしれません。 |
江戸後期 |
明和以後一般的に新々刀と呼ばれています。 新刀(宝暦までの刀)ではなく、鎌倉や南北朝の刀を目標に復古刀として作られました。
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日本の元号と刀の時代区分
○前回掲載しました「刀の姿と時代」に照応して時代区分しております。
鎌倉時代初期 |
文治(1185〜) 建久(1190〜) 正治(1199〜) 建仁(1201〜) 元久(1204〜) 建永(1206〜) 承元(1207〜) 建暦(1211〜) 健保(1213〜) 承久(1219〜) |
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鎌倉時代中後期 |
貞応(1222〜) 元仁(1224〜) 嘉禄(1225〜) 安貞(1227〜) 寛喜(1229〜) 貞永(1232〜) 天福(1233〜) 文暦(1234〜) 嘉禎(1235〜) 暦仁(1238〜) 延応(1239〜) 仁治(1240〜) 寛元(1243〜) 宝治(1247〜) 建長(1249〜) 康元(1256〜) 正嘉(1257〜) 正元(1259〜) 文応(1260〜) 弘長(1261〜) 文永(1264〜) 建治(1275〜) 公安(1278〜) |
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鎌倉時代後期 |
正応(1288〜) 永仁(1293〜) 正安(1299〜) 乾元(1302〜) 嘉元(1303〜) 徳治(1306〜) 延慶(1308〜) 応長(1311〜) 正和(1312〜) 文保(1317〜) 元応(1319〜) 元亨(1321〜) 正中(1324〜) 嘉暦(1326〜) 元徳(1329〜) 元弘(1331〜) |
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南北朝時代 |
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室町初期 |
元中(1392〜) 応永(1394〜) 正長(1428〜) 永享(1429〜)嘉吉(1441〜) |
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室町中期 |
文安(1444〜) 宝徳(1449〜) 享徳(1452〜) 康正(1455〜) 長禄(1457〜) 寛正(1460〜) 文正(1466〜) 応仁(1467〜) 文明(1469〜) 長享(1487〜) 延徳(1489〜) 明応(1492〜) 文亀(1501〜) |
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室町後期 |
永正(1504〜) 大永(1521〜) 享禄(1528〜) 天文(1532〜) 弘治(1555〜) 永禄(1558〜) 元亀(1570〜) |
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桃山期 | 天正(1573〜) 文禄(1592〜) 慶長(1596〜) | ||||||||||||||||||||||||
江戸前期 |
慶長(1596〜) 元和(1615〜) 寛永(1624〜) 正保(1644〜) 慶安(1648〜) 承応(1652〜) 明暦(1655〜) 万治(1658〜) 寛文(1661〜) 延宝(1673〜) 天和(1681〜) 貞享(1684〜) 元禄(1688〜) 宝永(1704〜) 正徳(1711〜) 享保(1716〜) 元文(1736〜) 寛保(1741〜) 延享(1744〜) 寛延(1748〜) 宝暦(1751〜) 明和(1764〜) 安永(1772〜) |
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江戸後期 |
天明(1781〜) 寛政(1789〜) 享和(1801〜) 文化(1804〜) 文政(1818〜) 天保(1830〜) 弘化(1844〜) 嘉永(1848〜) 安政(1854〜) 万延(1860〜) 文久(1861〜) 元治(1864〜) 慶応(1865〜) |
古刀五ヶ伝について
古刀五ヶ伝
山城伝
- ■地鉄
- 精鍛された杢目肌主体に小杢目・中杢目・大杢目まじる。
- ■刃文
-
直刃・直刃ほつれ・小乱れ・小丁子乱れ・大丁子乱れ等、いずれも焼幅は狭く変化に富む。
沸本位で沸粒揃い豊富。
匂い深く、刃中に砂流し・打ち除け・金筋など、はたらき豊富である。 - ■姿
- 鳥居反りで反りは深く、踏張り強く、小切先。真の棟多い。
大和伝
- ■地鉄
- 柾目肌が主体で、杢目・板目肌でも柾があらわれる。
- ■刃文
-
直刃、または直刃に小乱れ、互ノ目もある。
刃縁に打ち除けや二重刃、掃きかけなどが見どころ。 - ■姿
-
鳥居反りで鎬が高く、かつ鎬幅が広い。
行の棟多く、真の棟もある。
相州伝
- ■地鉄
- 板目肌を全体に杢目まじる。 地沸よくつき、地景走る。
- ■刃文
-
沸本位でのたれ乱れ、互ノ目乱れ。皆焼(ひたつら)など、乱刃が主体。
砂流しや金筋など華やかで刃文は上に行 くに従って大模様になる。 - ■姿
-
身幅広く、重ね薄く、平肉少ない。
反り浅く、切先のびる。真の棟が多い。
備前伝
- ■地鉄
-
鍛え細かく、杢目肌が主体で、杢目肌に板目肌が交じるものもある。
この場合、映りがあらわれる。 - ■刃文
-
匂い本位で乱れ刃が主体。丁子乱れ、腰開きの互ノ目乱 れが多い。
もと大模様、さき小模様になるのが通例。 - ■姿
- 腰反りになるのが特徴で、多くは行の棟。
美濃伝
- ■地鉄
- 杢目肌に柾まじる。地鉄硬い。鎬地が柾目肌となる。
- ■刃文
-
匂い本位で、直刃もあるが乱れ刃もある。
多くは互ノ目で、乱れの頭が尖るのが特徴。
刃文の形が表裏そろう。 - ■姿
- 鳥居反り浅く、鎬は高く、鎬幅は狭い。
山城伝について
平安末期〜鎌倉初期
三条宗近・吉家 (作品希有)
五条兼永・国永 (作品希有)
- (姿)
-
長さ2尺5寸〜6寸くらいまでの長寸のもので、腰反り高く踏張りがある。
物打ちあたり伏さる
小切先で元巾にくらべて先巾非常に狭い - (鍛)
-
小杢目つみ潤いがある
地沸よくつく - (刃文)
-
小乱れ・小丁子・打ちのけや、二重刃・三重刃になるものもある
小沸つき匂うるむものもある
鎌倉初期
粟田口派
- (姿)
- 平安末期からの姿を受け継ぐ
- (鍛)
- 小杢目肌よく練れ地沸つく
- (刃文)
- 匂本位の直刃・小乱れ・小丁子乱れ
鎌倉中期
来国行・二字国俊
- (姿)
-
反りの中心が高くなり、中間反りになってくる
元先の差が少なく、中切先で猪首風のものもある
国行には細身のものもある - (鍛)
-
小杢目つみ
地沸よくつき地景があらわれる
沸映りたつ
粟田口にくらべて少し劣る - (刃文)
-
丁子主体に互ノ目交じり、足葉入り華やか
小沸つく
棟焼きの入るもの多い
鎌倉後期
来国俊
- (姿)
-
変革せざる姿である
中期にくらべ、細くなる - (鍛)
-
小杢目のよくつんだ梨地肌で、柾が交じるものもある
地沸よくつき地映り立つ
地肌の交じるものもある - (刃文)
-
匂口の締まった直刃を得意とする
それがのたれ小乱れ・小丁子の交じるものもある
刃区を焼き込むのが見どころである
来国光
- (姿)
- 細身のものと、身巾広く重ね厚い豪壮なものとがある
- (鍛)
- 梨地肌で沸映りあり
- (刃文)
-
細身の刀は直刃や小乱れは焼巾が狭い
豪壮な刀は焼巾広く、直刃にのたれ・互ノ目・丁子・逆足の入るもの多い
沸はやや強く砂流しかかるものある
短刀の場合は沸より強く、帽子崩れて尖るものや火焔風になるものもある
来国次
- (姿)
- 切先のび南北朝期の姿へと入っていく
- (鍛)
-
杢目肌に来肌交じる
肌立つところがある
地沸よくつき地景入る - (刃文)
-
直刃調に小乱れ交じり、金筋・砂流しかかる
来一門では沸が最も強い
鎌倉後期〜室町時代
光包(みつかね) 作品少なく、短刀のみ
- (姿)
-
平造 三棟
尋常なものと寸延びのものとがある - (鍛)
-
小杢目肌つみ、地沸つき地景交じる
来肌があらわれることもある - (刃文)
-
直刃、沸よくつき金筋交じる
匂口明るく冴える
了戒(りょうかい)
- (姿)
- 身巾細めが多く、鎬造り・庵棟・中間反
- (鍛)
-
梨地で来国俊風のもの
板目が流れて白けるもの - (刃文)
-
直刃を得意として、小互の目・小丁子交じる
小沸にして、潤み・沈みごころあり
南北朝期
長谷部国重(くにしげ)
- (姿)
-
平造り 三棟、身巾広く、重ね薄く、反り浅い寸延び短刀
重ねの特に薄いものがある
また、脇差もある - (鍛)
-
板目肌立つ
刃または棟より流れ、柾がかる - (刃文)
-
元先の巾が変わらず、小湾れ
互の目に飛焼入り、皆焼(ひたつら)となる
国信(くにのぶ) 国重の弟で作品希少
- (姿)
-
太刀は小寸のものと小太刀がある
短刀は平造り・三棟、身巾広く、重ね薄く、浅く反る
国重以上に、特に大振りのものがある - (鍛)
-
板目肌立つ
国重同様である - (刃文)
- 国重同様のものと、互の目が目立ち角張ったものや連なったものがある
信国(のぶくに:南北朝期)
- (姿)
-
平造り・三棟・身巾広く、重ね薄く、寸延び
浅く反る - (鍛)
-
板目肌立ちごころあり
地沸つき、地景交じる - (刃文)
- 直刃調に互の目交じりのものと、湾れ調に互の目交じりのものがある
信国(のぶくに:応永期)
- (姿)
-
短刀は平造り・三棟
無反りで、やや寸延びる - (鍛)
-
小板目のつんだもの、板目に杢目交じりのもの、
やや肌立つもの、といろいろある - (刃文)
- 互の目が主体、湾れ交じる(互の目が二つ連なる)
室町時代
平安城長吉(ながよし)
- (姿)
-
平造り・三棟、身巾少し広め
重ねはやや薄く、先反りつく - (鍛)
- 小板目つみ、柾交じるものもある
- (刃文)
- 湾れ・互の目・箔かかるもの、表裏の焼が揃う 村正のようなものを見る
- (太刀)
-
刀は寸法がつまり、2尺1寸前後のものが多く、身巾やや広め、
先反りがつく
大和伝について
天国(あまぐに) 御物の小烏丸は天国作と言われています。
天座(あまざ) 未見
千手院(せんじゅいん)
大和五派の中では最も古い。
作品は少なく在銘もほとんどありません。
他の四派に比べて古色がありますが、いろいろな作風があり
四派に入らないものを極めていることが多いようです。
- (地鉄)
- 杢目肌に柾交じる、地沸つよく湯走りかかる
- (刃文)
- 直刃に小乱交じり沸荒く、二十刃、食い違い刃交じる
手掻(てがい)
- (姿)
-
中間反り、中切先で猪首風のもの。
身巾広く、長寸で豪壮なものもある
鎬高く、鎬巾広い - (鍛)
-
小板目よく詰むもの
板目肌だちごころに柾流れるものもある
地沸つく - (刃文)
-
直刃に二十刃、食い違い刃交じる
焼巾狭く、上にいくほどやや広くなる
大和伝の中でも沸一番荒い
末手掻(すえてがい)
- (姿)
- 鎬高く、鎬巾広い
- (鍛)
-
板目肌に柾交じる
地沸少なくなる - (刃文)
-
直刃主体であるが、乱れ刃もある
沸が少なくなり、刃縁しまる
当麻(たいま)
作品少なく、在銘品ほとんど見ません
- (姿)
-
中切先または中切先延びて、身巾広く
元と先の差が少ない
鎬高く、鎬巾広い - (鍛)
-
板目流れて地沸厚くつく
横手下より切先にかけて柾目が目立つ - (刃文)
-
直刃に二重刃や小乱れ、小互の目交じる
沸よくつき、砂流しあらわれる
尻懸(しっかけ)
- (姿)
-
中切先または中切先のびて身巾広く、元と先の
差が少ない
鎬高く、鎬巾広い - (鍛)
-
板目流れて、柾がかる
刃寄り柾流れ、鎬寄り板目になる
地沸つく - (刃文)
-
沸出来の直刃に二重刃、小互の目交じり
互の目が続く
沸出来であるが、やや弱い
保昌(ほうしょう)
作品少なく貴重である
まだ短刀の方が数が多い
- (姿)
-
定寸の短刀で、重ねやや厚いものを見る
時代下がれば寸のびる - (鍛)
-
柾目肌
地沸よくつき地景交じる - (刃文)
-
沸出来の直刃に二重刃、食い違い刃交じり
先に行くほど焼巾広くなり、沸よくつく
相州伝について
鎌倉末期
正宗
相州伝の完成者で、在銘品は短刀に数点あるが、
太刀には在銘確実なものはない
短刀
- (姿)
-
平造り・細身で内反りの尋常なものと、
重ね薄く反りのついた寸延びのものとがある - (地鉄)
-
杢目肌にやや大肌交じるものある
地沸よくつき、地景入る
湯走りのかかるものもある - (刃文)
-
湾れに互の目交じり
大乱れに大互の目乱れ
皆焼風のものは特に、沸強く金筋交じる
太刀
- (姿)
-
鎬造り
庵棟多く、三棟もある
身巾尋常なものとやや広いものがあり、どちらも - (地鉄・刃文)
- 短刀と同様なものや金筋の目立ったものがある
鎌倉末期〜南北朝初期
貞宗
正宗の子、又は弟子と伝えられている。
在銘品は皆無である
短刀
- (姿)
-
平造り
寸が延びて重ね薄く、浅く反る - (地鉄)
-
杢目肌に大肌交じるもの、
地沸よくつき、地景よく入るもの、
湯走りのかかるものがある - (刃文)
-
浅い湾れに互の目、小乱れ交じる
沸よくつき、金筋・砂流しかかる
太刀
- (姿)
-
身巾尋常で中間反り、中切先のものと、
身巾広く重ねの薄い、大切先のものがある - (地鉄・刃文)
- 短刀と同じ
南北朝時代
広光
貞宗の子、又は弟子といわれている
在銘の太刀はない
- (姿)
-
平造りの脇差と、寸延びの短刀とがある
身巾広く、寸延びて浅く反るのが特徴 - (地鉄)
-
板目肌主体となり、わずかに杢目肌交じる
地沸つき肌立つ - (刃文)
-
互の目に丁子交じる
皆焼となる
物打ちあたりに大きな丁子を焼く
※相州伝の皆焼は、上に行くほど深くなる
秋広
広光の子、または弟子と言われている
- (姿)
-
平造りの脇差
身巾広く、寸延びて浅く反る - (地鉄)
-
板目肌主体に杢目肌交じる
地沸つき、肌立つ - (刃文)
-
互の目に丁子交じる
皆焼となる
尖り刃交じる
室町時代
広正・正広・綱広
- (姿)
-
長寸にならず、2尺前後の小太刀もある
中切先で先反りがつく - (地鉄)
- 板目肌は目立たず小模様となり、よく詰む
- (刃文)
-
大乱れ・互の目乱れ・湾れ乱れに、丁子や尖り刃
交じるが、ムラ沸となる
刃中の働きが乏しい
南北朝初期
左文字
- (姿)
- 短刀。小振りで6〜7寸、ふくら枯れており、浅く反る
- (地鉄)
-
細かくうるおいがあり、小杢目肌に地沸厚くつき
明るく冴える - (刃文)
-
焼巾に広狭があり、小湾れ主体に互の目交じり
沸本位で匂い深く冴える 金筋交じる
帽子は乱れ込み、突き上げて先尖り、深く返る
長谷部国重
山城伝の時にもふれましたが、山城の鍛冶で
相州伝の影響を強く受けている
- (姿)
-
平造りの短刀と脇差があり、いずれも身巾広く重ね薄い
浅く反る - (地鉄)
-
板目肌に柾目肌交じる
棟寄りに柾目肌が目立つ
地沸つく - (刃文)
-
小湾れ・互の目に飛焼交じり、皆焼となるものもある
沸本位で砂流し・金筋交じる
室町末期
照重下原
- (姿)
-
長さ2尺1寸前後
身巾やや広く、中切先又は中切先のびごころ
先反りつく - (地鉄)
-
板目流れ、肌立ち、硬く黒ずむ
綾杉風のものもある - (刃文)
-
互の目・湾れ・皆焼
たまに広直刃のものも見られる
匂口沈む
康春
小田原相州
- (姿)
-
平造りの脇差と短刀は、身巾広く先反りつく
刀は、鎬造りで中切先、先反りつく - (地鉄)
- 小板目詰む
- (刃文)
-
湾れに互の目、箱がかった乱れや皆焼がみられる
匂いが強くなり、小沸つく
総宗
- (姿)
-
平造りの脇差が多く、その他に鎬造りの刀・脇差がある
中切先で先反り強くつく - (地鉄)
- 小板目詰み、地沸つく
- (刃文)
-
湾れ調に互の目や丁字が交じる
皆焼もある
匂いが強くなり、小沸もつく
綱広
- (姿)
-
長さ2尺1寸前後
身巾やや広く、中切先又はのびごころで、先反りがつく
最末期には寸法のびて身巾広く、先巾もあり中切先のびるものもある - (地鉄)
-
小板目に杢目肌交じる
肌立ち気味で地鉄が詰んで潤いがない - (刃文)
-
直刃・小互の目・皆焼
沸が少なくなって、匂いがちとなる
備前伝について
平安末期から鎌倉初期
古備前
- (姿)
-
太刀で2尺5寸〜7寸くらい
腰反り強く、先伏せごころ。小切先
元巾と先巾の差が大きく、踏張りがある。 - (地鉄)
-
杢目肌詰み、地沸つき地景交じる
正恒...地鉄杢目よく詰む
友成...正恒に比べ、肌立ちざらつき気味である - (刃文)
-
小乱れ刃で沸よくつき、匂口うるみごころ
砂流しかかり、金筋入る
鎌倉初期
古一文字
- (姿)
- 古備前と同じような姿のもの多い
- (地鉄)
-
杢目肌詰み、大肌交じる
古備前に比べ、映り目立つ - (刃文)
-
直刃仕立に小丁子、小乱れ交じるもの
焼巾の狭い小丁子
古備前に比べ、地沸やや少なく匂いがちとなる
一文字
◎福岡一文字
- (姿)
-
反りの中心が少し高くなって、中間反りに近くなる
身巾は広くなり、元先の差が少なく、中切先や中切先延び
ごころのものもある - (地鉄)
- 小杢目肌詰むものと、肌立って大肌交じるものとがある
- (刃文)
-
匂出来の丁字主体、小沸の交じるものもある
大丁子、重花丁子、蛭子丁子等、焼巾に広狭がある
焼頭が鎬にかかるものもある
鎌倉中期〜南北朝
◎片山一文字
- (姿)
-
身巾広く猪首切先の太刀と、元先の差の少ない大切先で
豪壮なものとがある - (地鉄)
- 小杢目肌の詰むものと、肌立って大肌の交じるものとがある
- (刃文)
- 丁字乱れが逆がかる
◎吉岡一文字
- (姿)
- 豪壮なものが多い
- (地鉄)
- 杢目肌に大肌交じる
- (刃文)
-
刃巾に広狭が少なく、丁字に互の目交じる
長船物に似る
鎌倉中期
光忠
- (姿)
- 巾広で猪首切先の豪壮なものと、尋常なものとがある
- (地鉄)
-
豪壮なものは小杢目詰み、尋常なものは板目
交じり少し肌立つ - (刃文)
-
物打やはばき元あたり小模様となる
匂出来、小沸つく
鎌倉中期〜末期
長光
光忠の子である。
「長光」二字銘を初代、「左近将監」銘を二代と言われることもあるが、
長光は一人と見る説もある。
作品多し
- (姿)
-
元先の差少ないガッチリした姿に反り浅いものと、
腰反りに身巾や細めのものとがある - (地鉄)
-
杢目肌詰み、地景交じる
丁子映りが鮮やかに立つ
光忠に似て...
- 丁子乱れに蛭子丁子交じるもの
- 互の目に丁子交じるもの
- 直刃調に小乱れ、直刃に小足入るもの
等いろいろある
鎌倉中期〜末期
真長
長光の弟
長光の代作をたくさん作っていると思われる
- (姿)
-
長光と同じような姿
たまに長寸のものあり - (地鉄)
- 小杢目肌詰み、映り立つ
- (刃文)
-
互の目、丁子交じる長光風のものと、
直刃に小足入り匂口の締まるものとがある
鎌倉中期
景光
長光の子
- (姿)
- 鎌倉末期の時代の姿と、細身の腰反りのものとがある
- (地鉄)
- 小杢目よく詰み、乱れ映り立つ
- (刃文)
-
初期...丁子に互の目交じり、足よく入る
後期...片落ち互の目、匂出来
直刃や、直刃に小足の入る淋しい刃もある
鎌倉末期〜南北朝中期
兼光
景光の子
- (姿)
-
太刀...巾広で元先の差が少ない中切先延びごころのものと、身巾広く大切先で長寸のものがある
短刀...平造り内反りのものと、寸延びて反りつく重ねの薄いものとがある - (地鉄)
-
小杢目のよく詰むものと、やや肌立つものとがある
また、乱れ映りのものと、棒映りのものとがある - (刃文)
-
直刃、片落ち互の目、湾れに小互の目交じるもの
少し沸づく
南北朝期
長義
南北朝期の長船を代表する刀工
沸強く、相州伝風であるのが特徴
(相伝備前といわれる)
- (姿)
-
身巾広くしのぎ狭い
長寸で大切先 - (地鉄)
-
板目肌や板目肌に杢目交じる
乱れ映り立つ
沸強い - (刃文)
- 湾れ主調に互の目・小丁子交じる
応永備前
〜盛光・康光・師光(応永の三光という)
- (姿)
-
長寸で反り高く先反りつき踏張りあるものと、
寸法・反りともに頃合いで尋常なものとがある - (地鉄)
-
杢目肌に大肌交じる
刃文に関係なく棒映りの立つもの多い - (刃文)
-
匂い出来、腰開きの互の目に尖刃や小互の目
交じる
康光に直刃が多く、乱れ刃の場合、盛光より尖刃目立つ
室町後期〜末期
末備前
〜勝光・宗光
- (姿)
-
二尺一寸〜二寸位のもの多く、身巾尋常かやや広め
先反りがつく - (地鉄)
-
小杢目肌詰み
映りが目立たなくなってくる - (刃文)
-
直刃は少ない
乱れは腰開きの互の目に尖刃・丁子交じり
足、葉入り沸づく
室町末期
与三左衛門尉祐定(よさざえもんのじょうすけさだ)
末備前の中で上工である
- (姿)
-
二尺一寸〜二寸前後
身巾やや広く鎬巾も広い
中切先のびる - (地鉄)
-
小杢目肌よく詰む
地沸つき、映りは目立たない - (刃文)
-
腰の開いた互の目
大湾れに小互の目交じる
広直刃
美濃伝について
兼氏(鎌倉初期〜南北朝初期)
大和出身で志津に移住
包氏を兼氏と改めるという
【太刀】
- (姿)
-
身巾広く、重ね薄い
鎬高く、庵棟。中間反り
切先は、中切先→中切先のびる→大切先と変化する - (地鉄)
-
板目肌、小板目肌つむもの
いずれも柾交じり
地沸よくつき、地景入る - (刃文)
-
沸本位で、沸匂い深く冴える
互の目主体、又は、直刃に小足入る
湾れを主体に互の目交じる
【短刀】
- (姿)
-
小振りで6〜7寸前後
平造り、三ツ棟で、重ね薄い
無反りのものと浅く反るものとがある - (地鉄)
-
小板目肌詰む
刃寄り・棟寄り柾がかる - (刃文)
-
沸本位で、沸匂い深く冴える
より少し穏やかになる
為継(南北朝中期〜室町初期)
- (姿)
-
太刀は身巾広く大切先の、豪壮なもの
浅く反る - (地鉄)
-
板目肌流れ
刃寄り・棟寄りに柾が目立つ
地鉄に黒みがある - (刃文)
-
湾れに互の目交じり。大乱れもある
荒沸もつき、しきりに砂流しかかる
善定派(室町初期〜末期)
- (姿)
-
小振りで、身巾細い
鎬高く、鎬巾広い - (地鉄)
-
小板目よく詰む
柾肌流れ
白け気味 - (刃文)
- 直刃・小沸出来で、匂口締まる
兼元(室町末期)
- (姿)
-
2尺1寸前後で、身巾尋常かやや広め
中切先か中切先延びる
反り浅く、先反りつく
鎬造り、鎬はやや高く庵棟
平肉少ない - (地鉄)
-
小板目よく詰む
柾がかり、白けごころあり - (刃文)
-
小沸出来
三本杉に匂口締まる
兼定(室町末期)
- (姿)
-
寸の詰まるもの多く、身巾は広め
中切先か中切先延びる
先反り強い - (地鉄)
-
小板目詰み、柾流れ
白けるもの多い - (刃文)
-
湾れに互の目交じりの、互の目・互の目丁字等
尖り刃交じるもの多い
兼房(室町末期)
- (姿)
-
身巾広く鎬造り
中切先延びる
先反り強くつく - (地鉄)
-
板目肌流れる
白ける - (刃文)
- 焼巾広く、匂本位の湾れ調互の目丁字
新刀について
埋忠明寿
- (姿)
-
刀は一口のみ。
脇差・短刀ともに、ほとんど片切刃造りで浅く反る - (地鉄)
-
板目詰み
やや肌立ちごころ - (刃文)
-
小湾れに互の目交じる
に砂流しかかる
堀川派
堀川国広
【天正打】
- (姿)
- 刀は鎬造りで寸法の詰まったものと、長寸のものとがある
- (地鉄)
- 板目に杢まじる
- (刃文)
-
互の目・小互の目や、尖刃まじるものがある
匂口締まる
【堀川打】
- (姿)
-
南北朝期の磨上の姿で、切先は大きく、身巾広く、
元先の差が小さい - (地鉄)
-
板目に杢交じり
地鉄詰むも、肌立ってザングリする
地沸厚くつき、地景はいる - (刃文)
-
湾れに互の目まじり
焼巾に広狭がある
堀川国安
- (姿)
-
中切先延びるものと、大切先のものがある
身巾広く、元先の差すくない - (地鉄)
-
板目に杢まじり
肌立つ - (刃文)
-
湾れに互の目交じり
砂流しかかる
大隅掾正弘
- (姿)
- 国広・国安と同様であるが、鎬巾が少し狭い
- (地鉄)
- 板目に杢交じり、少し流れる
- (刃文)
-
浅い湾れに互の目交じる
国広より焼巾狭い
出羽大掾国路
作刀期間が約50年に及ぶ刀工である
- (姿)
-
南北朝期の刀を磨き上げた姿で、身巾広く大切先のものから
中切先のつまった寛文新刀風のものまである。 - (地鉄)
-
板目肌流れ
ザングリとして肌立つものと、比較的詰んだきれいなものとがある。 - (刃文)
-
焼巾の狭い湾れに互の目交じりのものと、焼巾広く湾れに互の目交じりのものとがある。
堀川一門の中では、焼巾の広い刀工である。
三品系
室町時代末期、美濃国の兼道が祖となる
伊賀守金道(兼道の長男)
- (姿)
- 南北朝期の大太刀を摺り上げた姿
- (地鉄)
-
板目流れ柾がかる
肌立つ
地沸つき地景交じる - (刃文)
-
一、湾れに互の目、尖り刃交じる
兼定風や兼房風があるが、いづれも匂口締まる
一、湾れに互の目
大乱に大互の目で、沸の強いもの、砂流し・金筋
交じる - (帽子)
-
乱れ込んで地蔵
たるみ、尖りごころに返る(これを三品帽子という)
来金道(次男)
来家を再興して来金道と名乗る
初代 越後守・二代 和泉守を受領する
- (作風)
-
伊賀守金道に似るが、一門中で一番作品少ない
伊賀守金道に比べ、刃の出入り少なく、出来劣る
丹波守吉道(三男)
- (姿)
- 伊賀守金道に似る
- (地鉄)
-
小板目肌に柾気強く流れる
一門中ではよく詰む - (刃文)
-
焼巾広く湾れ、互の目
沸荒く、しきりに砂流しかかり、簾刃風になる
簾刃が強くなると、小沸で匂口締まりごころとなる
越中守正俊(四男)
作域広く器用である
作品は比較的少ない
- (姿)
- 伊賀守金道に似る
- (地鉄)
-
板目に柾流れる
地沸つき地景交じる - (刃文)
-
○互の目にところどころ尖り刃交じる
小沸つき匂口締まる
○箱がかった大互の目乱
互の目に丁字交じる
沸強く砂流し金筋かかる
初代和泉守国貞
国広の弟子であるが、実際は越後守国儔あたりに指導を受けたであろうと言われている。
(堀川一門)
- (姿)
-
一、幅広で中切先のびるもの。
まれに大切先(慶長新刀風)
一、身巾頃合い。先細って中切先詰まる。反り浅め - (地鉄)
-
小板目よく詰んで地沸厚くつく
地景交じる - (刃文)
-
湾れ、互の目、湾れに互の目交じる
互の目丁字交じるものもある
直ぐの焼出しがあり
物打ちあたり焼刃深くなる
井上真改
親国貞の子である
- (姿)
-
刀は反り浅く、元巾にくらべ先巾狭く、身巾尋常
切先は中切先もしくは中切先詰まる
身巾広めのものに中切先延びるものある
脇差多い - (地鉄)
-
小板目よく詰み
地沸厚くつき、地景交じる - (刃文)
-
【国貞銘】湾れに互の目、
真改銘のものに比べて匂口深くない
【真改銘】焼巾やや広く浅くのたれ、
小沸ついて匂い深い金筋・砂流しかかる
河内守国助(初代)
国貞と同様に越後守国儔に指導を受けたであろうと言われている
(堀川一門)
- (姿)
-
反り浅く、元先に比べ先巾狭く、中切先か中切先詰まるもの
たまに長寸のものもある - (地鉄)
-
一、小板目が詰んだもの
一、板目に柾流れて肌立つもの、地沸つく - (刃文)
-
小湾れに互の目や丁字交じるもの多い
匂口沈みごころのものと、明るく冴えたものとがある
河内守国助(中河内)
初代国助の子
- (姿)
-
反り浅く、元巾にくらべて先巾狭い
たまに長寸のものを見る - (地鉄)
- 小板目詰む
- (刃文)
-
匂本位の挙形丁字乱をやく
長い焼出しがある
そぼろ助広
播磨の出身。初代国助門
- (姿)
- 寛文新刀体配で、寸のつまるもの多い
- (地鉄)
- 小板目つむ
- (刃文)
- 小沸出来の互の目に丁字交じる
津田越前守助広
- (姿)
-
元巾に比べ先巾狭く、寛文新刀体配
脇差多く、ガッチリしたもの、まま見る - (地鉄)
-
小板目よく詰む
きれいな地鉄で地沸よくつき、明るく冴える - (刃文)
-
【初期作】互の目丁字乱れ
【後期作】濤瀾乱れ。元に焼出がある
匂い深く小沸よくつき、沸にムラなく明るく冴える
助直
助広門(助広の妹婿か)
近江国野洲郡高木村出身
- (姿)
-
寛文新刀体配であるが、尋常なもの、細身のもの、巾広のものや
反りの浅いもの、深いもの等、いろいろある - (地鉄)
- 小板目よく詰むが、助広に比べやや肌立ちごころ
- (刃文)
- 助広と同様であるがやや沸が荒く、砂流しが目立つものもある
一竿子忠綱
近江守忠綱の子
- (姿)
-
ほとんどが鎬造りの刀と脇差
平造りは少ない
身巾広く先巾も広く、中切先か中切先延びる - (地鉄)
- 小板目よく詰み、地沸厚くつく
- (刃文)
-
【初期作】焼巾広く頭が揃った丁字、足長く入る
【後期作】湾れに互の目や丁字交じる。砂流しかかる - (彫刻)
-
竜、真の倶利迦羅、その他にも彫刻多い
彫刻のある時は「彫同作」「雕同作」と添銘を切る
越前康継
近江国坂田郡下坂の出身
はじめ「肥後大掾下坂」と名乗り、のち徳川家康より葵紋と「康」の
一字を賜る
- (姿)
-
刀は身巾広く先巾もあり南北朝期の大磨上で、一般に言う慶長
新刀体配である。 - (地鉄)
-
板目や小板目に杢交じり、流れて肌立つ
黒ずんで見える
鎬地は柾目目立つ - (刃文)
-
焼巾広く
- 直刃調の浅い湾れ
- 湾れに互の目交じる
- 大乱
- 皆焼刃等
匂口は締まらず沈む - (彫刻)
- 棒樋から素剣や倶利迦羅・不動明王など、さまざまな意匠の彫刻がある
肥後大掾貞国
- (姿)
-
康継同様、慶長新刀体配
平造りのものは三棟で短刀は寸延び - (地鉄)
-
小板目肌に杢交じる
越前関の作品の中ではよく詰んだ肌である
やや黒ずむ - (刃文)
-
直刃調
浅い湾れに小互の目交じる
小沸つき、砂流し・金筋まじるものある
兼若
- (姿)
-
【初期作】 身巾広く大切先又は中切先延びる
【後期作】 身巾やや狭くなり、反り浅く中切先 - (地鉄)
-
【初期作】 板目肌流れる
【後期作】 小板目となり詰む - (刃文)
-
【初期作】 湾れに互の目
こずむ、矢筈刃交じる。美濃風
【後期作】 湾れ主体に互の目乱れや箱乱
沸は強く荒沸交じる
江戸石堂
武蔵大掾是一
日置出羽守光平
対馬守常光らが江戸を中心に作刀したので、こう呼ばれています。
- (姿)
-
鎬造りの刀、脇差
中切先か中切先詰まるもの
反りは浅いものと頃合いのものがある
光平には姿の良いものが多い
平造り、短刀は少ない - (地鉄)
-
小板目詰むものと、小板目に杢交じるもの肌立つ
映り立つが白けごころがある
鎬地が柾目になる - (刃文)
-
古作一文字を目指して丁字を得意とする
焼巾に広狭あり焼き出しはあまり見ない
大丁字乱れ
逆丁字乱れ
匂い本位で小沸つく - (帽子)
-
直ぐに先小丸
又は小さく乱れて小丸に返る
長曽祢興里入道乕鉄
もともと越前の甲冑師
五十歳を過ぎて刀鍛冶になる
上総介兼重を師とする
- (姿)
-
【初期作】
反り浅く身巾広い
中切先・中切先のびる
大切先もある
【後期作】
寛文新刀体配で反り浅く、棒状のものもある
切先つまる - (地鉄)
-
小板目よく詰む
地沸厚くつき明るく冴える
鎬地は柾がかる
はばき元から2〜3寸上にテコガネあらわれること多い - (刃文)
-
初期作は、美濃風の湾れに互の目や尖り刃の交じったもの
やがて瓢箪笥から数珠刃へと変化していく
相対に焼巾広く短い焼き出しがある - (帽子)
-
横手上で焼巾が狭くなる
先小丸に返る
虎徹帽子
他に、尖りごころや崩れるもの、焼詰めもある
「水心子正秀」について
水心子正秀
出羽山形の出身ではじめ鈴木三郎宅英と銘し、後に英国とする。
秋元家に仕えてからは川部儀八郎藤原正秀と改め、水心子と号している。
初期−沸匂の深い助広風の乱刃(大坂新刀風)
後期−鎌倉末・南北朝期の備前物、相州物を目標とする
- (姿)
-
身巾広く中切先延びごころ。
反り浅くつく
備前伝は反りやや深く、身巾やや細め - (地鉄)
-
大坂新刀風...小板目よく詰む
地沸よくつき、きれいである
相州伝風......小板目よく詰むものと、
杢目交じり流れたり
大板目ごころのもなどがある
備前伝.........無地風となり、地沸少なく潤いがない - (刃文)
-
大坂新刀風...助広の濤瀾乱
匂い深く、沸よくつく
相州伝.........湾れに互の目乱
沸荒く、砂流ししきりにかかる
備前伝.........匂本位で、子丁字に互の目交じり
ときどき腰の開いた
乱れ交じるものもある
助広と正秀の相違点
- (姿)
-
助広...寛文新刀姿
正秀...切先が少しのびごころ
少し巾広で平肉少ない - (地鉄)
-
助広...小板目よく詰み
地沸厚くついて明るく冴える
正秀...小板目よく詰むが、地沸にムラがあり劣る - (刃文)
-
助広...濤瀾刃がやや角張る
匂口深く、小沸つく
正秀...助広に比べ、大互の目が少し丸い
ムラ沸になるところがあり、劣る
水心子正秀門下の有名工
- 二代正秀
- 水心子正次
- 大慶直胤
- 細川正義
- 加藤国秀
- 池田一秀
- 松村昌直
等